第1章:不気味な手紙

鳴神町の夜は、普段通りの静けさに包まれていた。街灯の明かりがぼんやりと通りを照らし、雨がしとしとと降り続けている。その日は、特に何も変わらない一日だったはずだった。しかし、田中真理にとって、その夜が平穏な日常の終わりを告げることになるとは知る由もなかった。

真理はいつものように仕事を終え、傘を差しながら家路を急いでいた。彼女は地元の小さな出版社で編集者として働いており、その日も仕事に追われていた。ようやく自宅の前にたどり着き、郵便受けを確認すると、一通の黒い封筒が目に入った。

「何だろう、これ…」

封筒には差出人の名前はなく、ただ真理の名前が黒いインクで書かれていた。何か嫌な予感を覚えつつも、彼女は封筒を手に取り、中身を確かめるために部屋に戻った。明かりをつけ、濡れた傘を片隅に置いて、封筒を開くと、中から一枚の手紙が出てきた。

「夜が深くなると闇が囁く」

その一行と共に、失踪した女性たちの名前が列挙されていた。真理は震える手で手紙を握りしめ、その内容をじっくりと読み返した。彼女の胸には恐怖と不安が広がり、何か大きな陰謀に巻き込まれているのではないかという直感が働いた。

続く


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